PIW(プリンスアイスワールド)横浜公演。
GW中に2回行って来ました!\(^O^)/
町田さんきっかけで今年で通うこと3年目になりますが、プリンスチームの群舞も楽しく、他のゲストの方の演技も大いに堪能しています〜。
今年の町田さん ーーーなんだか町田くんと言いづらくなってきた今日この頃wーーーの演目は思いっきり定番バレエプログラムの「ドン・キホーテ」でした。
公式ホームページ 2017 Spring:Don Quixote Gala 2017:Basil's Glory
(ドン・キホーテ ガラ 2017:バジルの輝き)ガラ公演2017と銘打ってあるように、ドンキの一番有名なパ・ド・ドゥを、町田さん一人で演じるということで、バジルに焦点を当て翻案したとのこと。町田ファンなら垂涎のプログラム!
感想はとにかく「かっこいい!!」の一言。
かっこよさが衣装とスケート靴を履いて踊ってるみたい(笑)
決めポーズも何気ない動きも「おおっ」てなるかっこよさ!
そして楽しい!!
見終わった後にジャンプが何本何種類入っていたかが全く記憶にないくらい、プログラムとジャンプが溶け込んでいる。あとで9本跳んでいると聞きましたが信じられないです。また、幕間の「間」も含めて9分間と聞いて、これまた信じられない。
TV放送で見直すとまた感想が変わる可能性もあるのですが、1週間後の放送までの町田ロスの心のスキマを文章に書くことによって埋めたいと思います。(爆)
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では長文いきま〜す!(笑)
まず、町田版ドンキの構成について。
このプログラムは3幕仕立ての構成になっています。
●1幕 バジルのバリエーション(約1分)、暗転
●2幕 パ・ド・ドゥのアダージョ(約4分)、暗転
バジルは一度幕に引っ込み赤いジレに着替えて再度登場
●3幕 コーダ(約1分半)
となっています。
…が、この基本構成の前に、「導入部の無音パート」があります。
◎リンクの出入り口の白い幕が緞帳のように赤いライトで照らされ、オケのチューニングの音が聞こえてくる。
(一気にアイスリンクがオペラハウスの雰囲気に変化します。観ている私たちはドキドキが最高潮。)
幕の奥から町田さんが登場し、無音のままトリプルルッツ!
そして、そのまま緊張したおももちでゆっくりとポジションに付き、ポーズ。
そこで初めて1幕のバジルのバリエーションの音楽が(ズンチャッチャと)始まります。
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この導入部の演出は観客に次に何が起こるのかと、一気に舞台に集中させる大変効果的な演出ですが、それと共に、このプログラムの意味ーーー「3幕仕立てのバジルの物語」の意味を重層的にしています。
青年は、バジルその人ともとれますが、一方で、舞台袖でウォーミングアップして「バジルを演じようとしている」ダンサー、本番の前にジャンプを試みるスケーターとも解釈できます。
つまり、この3幕からなるプログラムは「バジルの物語」”Basil’s Glory”である一方、「バジルを演じる演者(ダンサー、スケーター)の物語、”Basil Dancer's Glory”」としても解釈できるのではないでしょうか。
◎導入部(無音)演者のトリプルルッツ&スタンバイ
|(以下劇中劇)
| ●1幕 バジルのバリエーション(約1分)、暗転
| ●2幕 パ・ド・ドゥのアダージョ(約4分)、暗転
| バジルは一度幕に引っ込み黒いジレから赤いジレに着替えて再度登場
◎3幕 コーダ(約1分半) 「この日を捕らえよ」”Carpe diem”
ジレを着替えることによって「今という時」にキャラクターが統合する
町田さんの公式ホームページに連なっている、過去にバジルを演じたバレエダンサーやスケータ達、過去の演者たちへのオマージュ。そして、その劇中劇としての「バジル」。
私が導入部を見て真っ先に思い出したのは、1989年の熊川哲也氏のローザンヌバレエコンクールで、カメラが舞台袖のスタンバイから舞台まで熊川氏を映していた光景でした。
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バレエ版ドン・キホーテは、スペイン情緒豊かな振付になっています。スペインと言えばフラメンコ、闘牛士、ジプシーみたいなプティパ当時のロシアの趣味だと思いますが、(日本といえばフジヤマゲイシャみたいなものですかね)バジルの衣装にも振付にも闘牛士(風)が見受けられます。
町田版では1幕の「技のバジル」がもっとも闘牛士(風)ですが、2幕3幕と進んでいくに連れ、闘牛士風味が消えていくのが面白いです。ちなみに、手元にある1978年のボリショイ・バレエのプログラムを見てみると、ゴルスキー版だと三幕目は、バジルが「銀月の騎士」キトリが「ドゥルネシア姫」に仮装するとのこと。
銀月の騎士ってなんだろう?と思ってググってみると、ドン・キホーテと戦って勝つラスボス(のようなもの)らしい…
わからないんですが(笑)、劇中劇の要素はオリジナルのバレエの中の要素でもあるようです。
町田版第3幕は一度幕の中に引っ込んで、黒いジレから赤いジレに着替えて登場。
公式ホームページによるとポケットに豊穣の象徴である麦の穂を入れてとありますが、この3幕目で出てくるのは、おそらく「素の」床屋のバジル。
「バルセロナの地で自由闊達に生きるバジルその人」
「決して裕福でない青年バジルが、それでもなお今という時を楽しみ、自由闊達に踊る姿」
…という公式サイトの言葉のとおり、皆がポケットの中の幸せの麦の穂を受け取れるような笑顔でステップを披露してくれるのです。
☆町田さんは今回(特に初演の日)いつもより濃いバレエメイクをしていたようですが(といっても本物のバレエメイクよりだいぶ薄いけど)、この「バジルを演ずる演者の役作り」と捉えると、もしかしたら「メイクがはっきり観客にわかるように」?との意図があるのかな〜と思います。
もっとも公演が進むにつれ、TV録画の兼ね合いもあってか、いつもどおりのメイクに戻った気がしますが。
スケートリンクは観客との距離が測りづらくて色々難しいですね。_________________________________________________
このように、全体の構成は超有名バレエのガラ・コンサートの形式。
一方、気づくか気づかないかの細い伏線を織り込んだ、町田版ドン・キホーテ。
「演者」は町田さん自身でもあるわけです。
町田さんは現役時代、フリープログラムでランビエール版のドン・キホーテを演じました。2011-2012年のシーズンでした。
もちろん、あの演技も好きでしたが…
それから5年の時を経て、なんというさらに素晴らしいパフォーマンスを私たちは見られるようになったのでしょう!
2幕目のアダージョで北側に立った町田さんが大きく両腕を広げて笑顔になる場面。本当に印象的でした。
何を得たのか、何を掴んだのか。
…と、思わず見入ってしまうようなシーンでした。
バジルも町田さんも共に願いがかなったのだろうか…そう考えあのシーンを思い出すると感極まる所があります。
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町田さんは今回PIWのパンフレットの中で2年ぶりにインタビューを受けていますが、「(アイスショー文化が)他の舞台芸術やエンターテイメントと競っているという意識が必要」と述べられています。
どの専門分野でもそうなんですがーーー私の専門分野の絵画でも、オペラでもバレエでもきっとそうですがーーーあるジャンルが20年30年続くと、必ずや「こうでなければ正統派でない」という考えが出てきます。
しかし、ジャンルがそのジャンルの枷を超えていかなければ、必ずや滅びます。
こと舞台芸術では、芸術性と大衆性(同時代性)が共になければ続きません。
「普通のことをやらない」町田さんに対しいまだにいろいろ言う人もあるようですが、ぜひぜひぶっ飛んだことをこれからも続けてほしいです。
毎回プログラムの期待のハードルが高くなって大変とは思いますが。
モーリス・ベジャールの言葉をひとつ。
「コントラスト、ショックーーーこれしかバレエを救ってくれるものはない。ひとは常にまどろむ傾向にあるが、時にはショックのおかげで真実をかいま見ることができる。」
5/15追記
テレビ放送されました!
やはりなんど見ても素敵なプログラム。
また観ているうちに別な感想も出てくるかもしれないですが、とりあえず今は町田さんの笑顔を堪能しています♪
8/2追記
町田くん表紙の「アイスショーの世界4」出ました!
ドン・キホーテについてインタビューでたっぷり語ってくれていますが、残念、劇中劇説は穿ち過ぎでしたね(笑)
原作の小説のバジルのイメージとバレエのバジルのミックスとは意外でした。(また小説読んでない)
そんなことも頭に入れて東京公演楽しんできましたが、またそれは別の機会に♪(長くなりすぎそう)