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バイオリンと外宇宙の話 vol.2

ボヘミアン・ラプソディー

この前重い腰を上げてようやくインフルエンザの予防接種してきました。(来年3月にお教室の展覧会があるので、その時かかっちゃったら大ごとだもんね)
で、そのまま勢いで…

行ってきました!「ボヘミアン・ラプソディー」



クイーンは一応リアルタイム世代だったのですよね〜
中学生になって親に初めてラジカセを買ってもらい、深夜ラジオを聞けるようになって、流れてきたのがボヘミアン・ラプソディーとかバイシクル・レースとかだったなあ。
最近でも、町田樹さんのエキシビションナンバーとか、ベジャールさんのバレエとかで、クイーンは何かとご縁があるんですよね。

で、発作的に映画館に飛び込んだんですが、案の定、頭の中がフレディの歌声でぐるぐるになって帰ってきました!(笑)
とっても良い映画でした!
ストーリー展開上一部事実と異なるところもあるそうで、コアなファンの方はいろいろ突っ込みどころがある映画なんでしょうけれど、音楽のチカラを大いに感じられる素晴らしい映画でしたよ〜。
(そして何気に猫映画でもありました)
こういうのはやっぱり映画館で見なくちゃね。

よくわからないけどIMAXとか、応援上映とかいろいろあるらしくて、それも楽しそうです。

家に帰ってきてYouTubeで早速映画のクライマックスに使われてるライブ・エイドの映像とか、ベジャールさんのバレエのときに友達にダビングさせてもらったアルバムとか聴いてたら、夫が「お前のせいでアレが耳にこびりついてしまってどうしてくれる」と。
アレというのは「ユーアー・ザ・チャンピオン〜」のことです(笑)
ちなみに夫はクリムゾンのガチファンでございます。

まあ夫はほっといて、さらにベジャールさんのバレエを探したら、これもYouTubeでありました!
自分のブログをみたら見に行ったのは 2006年6月のこと。
今はなき五反田ゆうぽうとでした。



懐かしいなあ、いろいろと。

こちらはみんな大好き町田樹さんの「Don't Stop Me Now」
    13:22 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

町田樹さん最後の公演 「人間の条件」マーラーのアダージェット



明日、世界が
 滅びるとしても
今日、あなたは
 りんごの木を植える

開高健


町田さんのホームページより






予想通り連休中は廃人状態で過ごしましたが(笑)
無事行ってきました!さいたまスーパーアリーナ・町田さんの最終公演!!
2つの演目のうち「人間の条件」についてのみ書きます。(これでも十分長くなりますw)

本当に本当に素晴らしい作品だった。
そして、アダージェットという曲目を先に知れて良かった。
最後まで泣かずにしっかりと、パフォーマンスを堪能できました。(帰りの電車に乗ってからジワッと来ちゃいましたけどね)

S席から観たことで照明の素晴らしさも、俯瞰でしっかり堪能できたと思います。TV放送が一昨日あったのですが、あの大空間の照明の素晴らしさは、やはり半分くらいしか伝わっていなかったように思います。(カメラさんも頑張っていて美しい映像だったと思いますが)



町田さん以外に、いったい誰がアイスショーでこのような照明を発想できたでしょう。

革新的でした。
すべてが斬新でした。

黄昏を思わせるようなライトの中で、アラベスクのポジションでエッジワークのみを使って前後にゆっくりと動く始まり。
教会の窓からもれているかのような四角い白い光。
白い十字架のようなライトの中心にに倒れる町田さん。
滑った軌跡をなぞるようにリンクに残る白い雲海のような模様。
まるで人生の軌跡を表しているかのように…

神あるいは運命の支配者を象徴するのが青いライト。
青いライトとの対話がこの「人間の条件」を貫くテーマです。

曲が短調に転調する前、スタスタと歩いていくところ、TVではわかりませんが青い小さい丸いライトが雨のようにリンクのあちこちに落ちてきます。
そして、曲が転調し「怒り」を表すパートで、天上に吊るされたトラスに光る稲妻のような閃光が光ります。こんな演出初めて見ました。
青く染まったリンク、つまり運命にとりこまれた人間が、また遠くに白い雲海を見つけて歩み寄る。希望、でしょうか。

立ち止まった町田さんに下りる青いライト。(TVでもわかりますが、会場では天井から一本の細い青い線が落ちてきたかのように見えました。)それを手で掬い取るようにして飲み込む町田さん。

最後に青い光が四方から中心に注ぎ、中心に水色のライトが照らされる。運命を受容するかのように、その中に自ら入っていく「人間」。
中心の水色の光の中で手を伸ばす。「それでもりんごの木を植える」






マリオネットのような動きなど、全体的にベジャール/ドン版のアダージェットの影響が見られますが、この「人間の条件」はまぎれもなく町田さんのフィギュアスケート作品でした。
そして作品の隅々に町田さんの過去に滑った作品の断片が散りばめられていました。
それらの断片を編み直し生まれ変わらせた、まさに集大成の作品。

演技後、満員のさいたまスーパーアリーナが総立ちになり、アンコールがないとわかっても、おそらく町田さんは出てこないだろうとわかっていても、いつまでもいつまでも鳴り止まない拍手が続きました。
誰しもがこの空間を、もう少しだけ長く味わっていたかった。







ちょうど私が手の手術でバイオリンの活動をお休みにして、時間が出来自然テレビを見る時間が増えた頃からソチシーズンの町田樹の快進撃が始まりました。

私は昔から映画を見れば俳優より監督に惚れ、バレエを見たらダンサーより振り付け・演出家に惚れるタチでした。
町田さんが好きになったのも、アスリートでありながらプロデューサー気質というか、クリエーターの気概というか「あ、これは理想のフィギュアスケーターだ」ってビビーンって来たんですよね。
スポーツとしてのフィギュアスケートにまさかこんな人が、とりわけ日本男子シングルから出てこようとは思いませんでした。

自分のマイブーム歴はモーリス・ベジャールとかベルイマンとか色々あるんですが、町田樹さんに関しては、まだ出来上がっていない若い才能を発見できた自分がなんだか誇らしいです。(笑)

この4年間、現役引退後の素晴らしい円熟期をリアルタイムで、生で見られた巡り合わせに感謝します。

寂しさはありますが、10月6日彼はパフォーマーとしては終わるけれど、これからさらに才能が花開くことを確信できた一日でした。そしてその成果を見られる日も遠くないはず。
我々は何も失っていないのだと。

これからの活躍を期待してます。
町田さんもホームページで書いているように、「また必ずどこかでお会いしましょう。」
    17:38 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

いよいよ明日 町田樹さんの最終公演

昨日に続いて今日も「まっちー話」です(爆)

実は、今日、昨日のblogにも書いた「町田樹の世界」という冊子の発売日だったのですが、それに合わせてか午前中に突如町田樹さんの公式ホームページが更新され、CaOI(明日夜行われるアイスショーの方)の曲目が発表されました!!!

町田さんは秘密主義で有名で、めったに初演前に曲や内容を公開しないのですが、さすがに1日で2つの新作(それも1回こっきりの新作)だとお客さんの脳みそがパニックになると考えたのか?もしくは内容を理解するため音楽くらいは公開したほうがいいと判断したのか?
なんと曲目が発表されました。

マーラー「交響曲第5番 第4楽章アダージェット」

オリジナルの題名は「人間の条件」

もう曲名を聞いただけで涙がちょちょぎ出るというか…
ああこれを最終公演として、涙なしに観られるのだろうか…(無理)
この前ボレロの時にドンのアダージエットの話も書いたばっかりだし!

この曲はベジャールさんが亡くなってベジャール・バレエ・ローザンヌが来日公演のとき、元の予定プログラムにはなかったのにサプライズで追加されたんですよね。
ジル・ロマンさんが「ベジャールさんを愛して下さった日本の観客のために、ボレロに先立って、もう一曲プログラムを演じます。」とアナウンスがされたときから、もう私は涙がボロボロで、よく作品を味わえなかったという苦い思い出が。

その時の思い出は私の昔のblogに書いてます。

ある意味今日曲目を知れて良かったですよ〜。
明日前知識なくアダージェットが流れたら、もう涙がボロボロで町田さんの最後の演技、冷静に見られなかったかも知れないし。

…というわけで、今日の午前中は涙に暮れて廃人のように過ごしましたが、午後一で版元から注文していた「町田樹の世界」が届きました!

町田樹の世界


まだこの「町田樹の世界」をゲットしてない方にはネタバレになるので以下注意。





町田さん自身の言葉で、この「人間の条件ーアダージェット」は、ジョルジュ・ドンへのリスペクトと言っています。
私自身町田さんに興味を持ったのは現役時代「火の鳥」の時ベジャールの名が出たことからですが、それ以来現役最終年、そして引退後4年演技を見守っていて、町田さんのベジャールへの思いは私の勘違いじゃなかったと改めて確認できて感動しています。

そしてそれは、表面的な振付や雰囲気ではなくて、創作の原点にある哲学やコンセプトの立て方に現れていると思うんですよね。
バレエもフィギュアスケートも技法は違うところが多いのですが。

この「町田樹の世界」、全体的に大変読み応えのある本で、バレエダンサーの高岸直樹さんと町田さんの対談があったり、写真も本当に美しいものばかり。
また、昨日も書いたように編集部で「町田樹振付作品へ贈る言葉」を募集していて、一般の方からの町田さんの振付作品の感想が載ってるんですが、なんと!
アタシのも掲載されてます(爆)

本名で送ったので、読めばすぐわかるかもですが、万一目にしてもお知り合いの皆様、ツッコミはされませんように〜〜(やっぱちと恥ずかしい)

前日からこんなに翻弄されて、明日は自分はどうなってるんだろうか。ちょっと心配。
    20:13 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

ついに明後日 町田樹さんの最終公演

さいたまスーパーアリーナでのJOとCaOIまで、ついにあと2日になってしまいました。

JO(ジャパンオープン)
CaOI(カーニバルオンアイス)

まだ全然「最終公演」の実感がわかないのだけど、2日後の自分はまたゾンビ化している可能性大なので(笑)7月のPIW(プリンスアイスワールド)東京公演のこと書き忘れていたので思い出話をば。





7月13日東京初演の日、私は近所の美容院にiPadを持ち込んで、お兄さんにチョキチョキ髪を切ってもらいつつ、ツイッターで町田さん情報を収集してました。すると、初演の前に報道陣の取材があったらしく次々とニュースが流れてきました。

10月でプロ引退、町田樹さん会見全文「さようならは言いません」

氷上の哲学者、町田樹さんがプロスケーター引退を決断した理由

会見冒頭に広島はじめ西日本豪雨の被災者の方へのお見舞い、上京して以来の練習リンクの確保の苦労や、お世話になったリンクのインストラクターやトレーナーの方への御礼、プリンスチームへの思いなど、とても町田さんらしい内容でした。

その中で、「(現役引退のときと同様)今回も決してさようならは言いません」と。
「将来的には研究者としてフィギュアスケート界に貢献できることが必ずやあると信じていますし、そういう人材になれるように頑張っていきます」

そのニュースを読み、ああこれからも町田さんの活躍は知ることができるんだ、解説も聞けるんだと、チョキチョキ髪の毛切られつつ、思わずウルウルしていたら美容師のお兄さんに色々聞かれまして、実は町田樹さんの大ファンで明後日東京公演見に行くんですよ〜。でも、これこれこういうわけで引退しちゃうんですよ〜。て話をしました。

そして先々週2ヶ月ぶりに美容院行ったら、お兄さんに「町田さん最終公演、いよいよあと2週間ですね!!」って言われたりして(笑)。あらま〜覚えてたんですね〜。





東京公演の演技ですが、7月15日と16日の東京公演の「ボレロ」2度とも完璧でした!
15日はショートサイドの正面席で、あの日の出と太陽の昇るライティングに再び背中がゾクリとするほど感動し、16日はロングサイド席で細かな表現を堪能しました。

結局、横浜東京合わせて6公演見たんですが、そのうち5回がジャンプノーミス神演技という、4年間見てきた中でも完成度が一番高かったプログラムでした。

公演の楽の後、リンクを周回してお客さんとお話してる町田さんがあまりにさっぱりした顔をしているので、本当に良いセカンドキャリアを歩んでいるんだなと思いました。

見てる私達もさっぱりと…
と言いたいところですが、お隣の方は周回の時にシクシク泣いてたし、私も「ボレロ」演技の時は緊張してたので大丈夫だったのですが、その後のプリンスチームのナンバーの時に「この流れを見るのもこれが最後」などと考えてしまい、ウルウルしちゃいました。(恥)

今年わたしは父の事なんかがあったので、「ちょっとだけ自分にご褒美」って考えて、いつも横浜2公演なのを増やし4公演見たんですが、それが奇しくも最後の町田さんのPIWの年になろうとは。

でも、考えてみれば、現役引退のあと2015年の「継ぐ者」を見たときも、その時は一切マスコミの取材を受けていなかっただけに「いったいいつまで演技してくれるんだろう」と皆心配していた。
それから4年間も、(明後日の2作品を入れると)8作品も見ることが出来た。
貧乏な自分ですがw町田さんの演技については自分なりに可能なだけ見た!という自負があります。だから悔いはないんですが寂しいのは仕方ありませんね。

その後8月のPIW広島公演で、町田さんはPIWを卒業されました。



サプライズで引退セレモニーがあったそうですが、伝わってきた写真ではやはり町田さんさっぱりとにこやかな顔。

プリンスアイスワールドへの出演を終えて





わたしは町田さんの現役引退後4年間PIWに通ったわけですが、ほぼ毎回右か左の席の方は町田樹ファンの人だったので、いつも私が声をかけられたり(オープニングで町田さんが出てきたときの自分の挙動でだいたい誰のファンかバレる)、私の方からも声をかけたり、休憩時間にオタク話をしたりと、本当に楽しい時間でした。

来年以降も、PIW横浜公演は町田さんがTV解説をするでしょうから、1回くらいは行くかもです。でも、さすがに何回も見には行かなくなるでしょう。フィギュアスケートに関しては、元の「テレビで見るだけ」のライトファンに戻ると思います。

でも将来、町田さんが振付や演出を手がけるとなれば全然話は別です!
私が町田さんに一番期待しているのは、研究関連でのフィギュア界に対する貢献もさることながら、やはり芸術面。
どうかなるべく早い将来に、またクリエーターとしての町田樹が見られるようになりますように。





町田樹の世界

町田樹の世界
10月5日発売予定
編集部で「町田樹振付作品へ贈る言葉」を募集していたので、私も昔のblogを元に苦労して200字に縮めた キモポエム 感想を送りました。雑誌に載らなくても町田さんに届けてくれるそうです〜。

その他にも Kiss & Cry編集部『(仮)町田樹スペシャルブック』というのが冬に出版されるそうです。
引退景気というか、嬉しいやら寂しいやら…
    17:11 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

町田樹さんプロフィギュアスケーター引退

6月15日、町田樹さん御本人のホームページでプロフィギュアスケーター引退を発表されました。

今年はあと7月のPIW東京と8月の広島公演、10月6日のJO(ジャパンオープン),CaOI(カーニバル・オン・アイス)がありますが、もう来年から町田さんのスケートを見ることはかなわなくなりました。
毎年GWに楽しみに、どんな新プログラムなんだろう、音楽はなんだろうとワクワクしていた、もうそれも今年で終わりなんですね。
彼ほど次の作品が楽しみなスケーターはいなかった。
プロフィギュアスケーターの概念、アイスショーの概念を変えた人でした。
涙がとまりません。

ただその一方、いずれはこういう日が来るだろうということは頭ではわかってはいました。
研究者として年に何回も学会発表を行い、優秀発表賞を取り、今年からは慶応と法政で非常勤講師も。
それに加えて質の高いパフォーマンスを維持することの大変さ。
スケートリンク問題もあり、練習環境も大変だったことでしょう。

また、来年博士課程3年生であり、博士論文を仕上げるだけでも本当に大変で、その先の教職就職活動もあると思います。
が、ここ数年の町田さんの精力的な活動ぶりを見ており、(そしてそれが、町田さんの限界に至る努力の賜物であるにもかかわらず、不遜にも皆が慣れてしまって…)学生の間は滑り続けてくれると思っていただけに、1年早いその決断に衝撃を受けました。

現役引退の時はまだアイスショーで見られるという希望がありましたが、今回は町田さんのスケートが二度と見られなくなるという事実が本当にこたえます。寂しいです。

私はフィギュアスケートはずっとTVで観戦していたライトファンだったのですが、右手の手術をしてバイオリンが弾けなかった時期にソチオリンピックがあり、その後の世界選手権で町田樹さんにすっかりハマりました。

しかし、その年に現役を引退され、その頃は全くインタビューなどもなく情報がなかったので、「もう二度と見られなくなるかもしれない」と初めて生のアイスショーに行きました。
その時見たのがシューベルトの即興曲を全曲使用した「継ぐ者」
会場が水を打ったように静まり返るような素晴らしいパフォーマンスでした。

その年から今年で4年間、毎年毎年高く上がったハードルを飛び越えるような作品を次々と発表されて、CaOIで一日しか上演しないプログラムなんてのもありました。
やや生き急いでいるという感はそのころからあったかな。

そして今年の「ボレロ」。
これをやったら来年はいったい何をやれるのだろうというくらい、素晴らしい作品でした。
引退後の4年間で発表した作品は(10月のCaOIでやる予定の作品も数えると)計8作品。

沢山のプログラムのアイデアがあると言っていただけに、なにより御本人が一番スケートリンクから去ることはつらいでしょう。
あれだけブラボーが飛び会場が騒然となるほどのスタンディングオベーションを受ける演者としての自分がいなくなるのですから。
演じきって出しきること、それは恐ろしいほどの喜びだったと思います。

でも初心を貫いて学業を優先した。
プロなんだから何も「引退」とか宣言しなくてもいいのに(笑)休業と言わず一線をひいた。
とても町田樹さんらしいと思います。

現役引退のときと違い、現在町田さんの研究内容が伝わってきているので、フィギュアの世界から遠ざかるのではなく、より「真剣にフィギュアと向き合うための一歩」だとわかります。

解説も研究の一環と言っていたから、ぜひこれからもTV出てください。他の人の言わないことズバズバ言っちゃってください。お願いします!
あと雑誌の連載も続けてくださいね。
講演会なんかもあるかもしれない。
博士号取ったら、アイスショーの振り付けや演出もぜひチャレンジしてほしいです。

こう書いてたらわりと町田さんの未来が楽しみになってきて、ちょっと涙が止まった感じ(笑)

そんなわけでアトリエの10月の土曜日第一週目はお休みになります〜
(去年までは仕事はサボらないという理性が働いてましたが、これがラスト町田さんなんでね〜すみません生徒さんたち)


↓引退から現在の研究内容などに触れたインタビュー(必見です!)

早稲田ウィークリー 1

早稲田ウィークリー 2
    17:22 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

町田樹さんのボレロ

今年もGWがやってきました!そしてGWと言えば新横浜スケートセンターでのプリンスアイスワールド!
このアイスショーで、町田樹さんは必ず毎年新プログラムを発表します。

新プログラムはラヴェルの「ボレロ」でした。

最初2回見に行く予定だったのを追加で2回増やし、結局4回見に行きました。
お金があればもっともっと見たかった。10回でも20回でも見たかった。

学生時代、初めてベジャールの20世紀バレエ団を見に行った帰りに、フラフラと電車に乗り、乗客を見て「この人達はあのパフォーマンスを見ていないんだ。あんなすごいことが起こっているのに、知らない人が沢山いるんだ」などと考えたことを思い出します。

今回もそれに似た感情をいだきました。
それほど町田樹さんの「ボレロ」は凄まじいパフォーマンスでした。

一番好きなシューベルトの「継ぐ者」を見た時にも、初めて見たベジャールの公演を思い出しましたが、今回の「ボレロ」はそれに並ぶもしくは超える感動をいただきました。

また、今まで町田さんの演技だけを目当てに行っていたアイスショーでしたが、今回はプリンスチームの演技も素晴らしく、照明も強化され、ゲストとのコラボレーションもとても良かった。プリンスアイスワールドは「他のパフォーマンスと競うことの出来るエンターテイメント」になったのだと感じました。



●「台本」とベジャールリスペクト

公式「起源と魔力」

古の時代、まだフクロウの鳴く夜明け前、凍った湖で恐る恐るスケートを始めた男がスケートと踊りに魅了され、日の出と共に氷の下へ沈んでゆく。というストーリー。
このストーリーが、コンパルソリー、ステップ、ジャンプとフィギュアスケートの歴史をなぞって展開していきます。

この「フィギュアスケートでしか、氷の上でしか表現できないストーリー」いわば「台本」を着想したからこその、満を持してのボレロだと思います。

そして、町田さんのボレロはベジャールリスペクトでした。

実は私が町田さんに俄然興味を持ちはじめたのは、ソチシーズンの「火の鳥」の時。TVで「バレエ・リュス、ベジャール、ジョルジュ・ドンが僕のモチーフになっている」という発言を聞いてからです。

ドンの火の鳥なんて大昔の、よく知ってるな〜。私でも知らないのに。
あ、もしかしたら動画で見られるのかな?
検索したら某動画サイトでベジャール「火の鳥」があるじゃないですか。
「町田さんのおかげだ、ありがとう」と大感謝。

それ以来ずっとテレビで応援してたんですが、ソチ後の世界選手権ですっかり落ちました。
引退後、初アイスショーに通うようになったのも町田さんのおかげ。
んで、今に至ると(笑)

それはともかく、インタビューや発言内容、長い長い題名とか、プログラムノートとかからも、町田さんは筋金入りのベジャール研究家と推測されますw

今回の「ボレロ」はそのベジャールへのリスペクトとして、確固とした「台本」の上に、要所の「アクセント」として振付が入っています。

以前インタビューで「フィギュアスケートはバレエが源流だがヒップホップとかジャズとかいろいろなジャンルを取り込んで豊かになった文化」だと町田さんがおっしゃってましたが、このボレロはまさに、クラシックではなくモダンバレエ(コンテンポラリー)を吸収して新しい表現を進化させようとしているように感じました。

何人ものトップスケーターが出演している中、彼だけがまったく違う身体の使い方に見える。でも間違いなくフィギュアスケートであるという…。
考えられないような個性です。

●室内劇と宇宙

ベジャールのボレロは、初演のころと最近のものではだいぶ演出も変わってきていますが、テーブル上の「メロディ」と下の群舞「リズム」の細かい駆け引きなど、基本的に室内劇のテイストがあるかと思います。

それに対し町田さんの「ボレロ」は、オペラハウスよりはるかに大きい、四方向から見られる大空間での、リンクの天井までも使った大掛かりな照明を駆使し、夜から日の出という時間軸の設定のパフォーマンスでした。
「台本」では自然、湖、フクロウのいる森という設定ですが、もっと言うと宇宙を感じました。
音楽がフォルテッシモになる最後の数小節で全ての照明がリンクを灯し、その中で迎える死。

この全編クレッシェンドで出来ている音楽を、最初はコンパルソリーでゆっくりと、徐々にスピードが増していく、その緩急の付け方。スケートリンクいっぱいに凄まじいスピードで盛り上がっていく迫力。こればっかりはバレエでは出来ないフィギュアスケートでしかできない迫力です。その恐るべき技術。8分という長尺での体力配分もどんなに難しいことでしょうか。


●ジョルジュ・ドンについて

町田さんのボレロは衣装といい髪型といい、「男性による」ボレロを意識してると感じました。
最近ではギエムのボレロが有名ですが、ジョルジュ・ドンは(火の鳥の時に名前をあげていたので)当然彼のボレロを何回も見ていると思います。

ドンはボレロが一番有名ですが、私が最高傑作と想像しているのは「ニジンスキー・神の道化」です。
「想像してる」というのは、この作品はベルギーのサーカス・シアターで演じられ、来日公演の演目になかったために一生見る機会を失ってしまったのです。(ベジャールは作品をオペラハウス以外で発表することもあり、その「場」にこだわりがあった。おまけに封印癖もあった)
わずかに写真集でその壮大なパフォーマンスを想像するのみ…。

しかし、1990年にこのニジンスキーは芝居として蘇るという復活を果たしました。
ジョルジュ・ドンと、シーペ・リンコヴスキーという女優さんの二人芝居です。
初演当時のニジンスキーの踊りや今までドンが演じてきた演目が再編成されてニジンスキーの日記をテキストとした劇中で演じられました。
来日公演もありました。



この中にはマーラーの交響曲第5番のアダージエットによる素晴らしいソロもあります。
終盤のキリストの磔刑とニジンスキーの狂気を重ねて表現したドンの演技は凄まじいとしか言いようがなく、演技を終えて放心状態になっているドンが観てとられます。

この2年後にドンは亡くなりました。

ベジャールの回想録「誰の人生か?」では、ドンの死について断片的にことばが書かれています。

「ドンはなんとしても力尽きるまで踊り、恍惚状態に達しなければ納得しなかった」
「疲れたときにこそ、彼の最高の部分を発揮出来たのだ」
「彼は舞台の上で死にたがっていた。だが、彼は病院で死んだ」

ジョルジュ・ドンの死と、何より2007年のベジャールさんの死であまりバレエを見なくなった私ですが、町田さんの今回の「ボレロ」の「氷上舞台での死」によって、2人の死について何かカタルシスを得たような気がします。

町田さん、素晴らしい作品をどうもありがとう。

(そしてGW終わって、予想通りですが抜け殻になっとります。バイオリン練習せねば…)



↓はプリンスアイスワールド2018の町田樹さん密着ドキュメンタリー
メイキング・ボレロとも言える貴重な映像


    22:34 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

町田樹さんのフィギュアスケート解説

この前のblogでも書きましたけど、町田樹さんの解説!
すごく見応え(聴き応え)あって面白かったです〜。
テレビ東京グッジョブ!!

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…と大喜びしたのですが、夜の「オリンピック総集編」ってのが良くなくて、お昼に最高潮に上がったテレ東の株が、夜に急落したって感じでした。(笑)
ワイドショーとかバラエティーって、ソチオリンピックやその翌シーズンに散々不愉快な思いをしたので、今はまったく見なくなったんですが、それは正解だと改めて思った次第です。

それはともかく、エキシビションの前後に1時間もの長い尺を町田くんに任せてくれたのは本当に良かった!
あまりフィギュアスケートを見ない人たちには敷居の高い、ジャンプの種類や採点といったところを解説するのではなく、「なぜこの選手が魅力的なのか、このプログラムが魅力的なのか」というところを、しっかり語ってくれたこと。
順位や国籍にこだわらない町田セレクション。
まさに私が楽しんでいる通りのフィギュアスケートの愉しみ方をしっかり伝えてくれました〜。
これをオリンピックシーズンに地上波で発信できたというのはすごい波及力があったと思います!\(^O^)/

実況はあまり向かないかもしれないけれど、町田先生のこうした総括(町田セレクション入で)また聞きたい!
きっと画像編集も関わっているんですよね〜。

一週間後には学会もあるそうで…朝から晩まで本当にお疲れ様でした!
そしてゴールデンウィークのショーも楽しみにお待ちしてます!

見られなかった方はこちらをどうぞ〜
(オリンピックのため画像はぼかしてあるけれど解説は聞けますよ!)

2月12日団体戦後の解説
→1/2
→2/2

2月25日個人戦後の解説
→1/5
→2/5
→3/5
→4/5
→5/5
    17:38 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

町田樹さんの「白鳥の湖」ジークフリートとその運命

今年も仕事でJOとCaOI行けなかったんですが、先日CaOIのTV放送がありました。
町田さんの新作が「白鳥の湖」だと伝わってきたときはびっくりしました。PIWのときのオープニング衣装と振付から「海賊」が来るかな〜と思ったら全然違いました(笑)

町田さんはいつも新作披露の直後に公式HPに作品解説をアップしてくださるのですが、それをみて2度びっくり。
「ストーリー」が書いてあり、「氷上舞踊劇」と銘打っているのです。明らかに今までとは違うアプローチ。

公式ホームページ

以下、もっぱら舞台演出的観点から感想を述べたいと思います。

バレエの技法と比較したり、スケートの技術観点から感想を書いてらっしゃる方が多いのですが、私はムーブメントに関しては「音楽的か魅力的かそうでないか」くらいしかわからないので(笑)
例によって見当ハズレなこと書いてる可能性大ですがお許しを〜

で、感想ですが…

やっぱり町田さんすごい!
音楽的だった、そして魅力的だった!(笑)
面白かった!!



●照明の重要性

公演後、怒涛のようなTwitterの感想で見聞きしていた「素晴らしい照明の演出」が、放送では伝わりにくかったのが少し残念です。
2幕目の宮殿の描写でフットライトを上に向けて柱のように見立てたり、真っ赤なライトを観客席一面に当ててオデットの悲劇を暗示したという演出を楽しみにしていました。
引きの映像も欲しかった。

ですが、映像でも町田さんの表情はたっぷり楽しめましたし、ジークフリートがオデットのあとを追ってリンクを突っ切って走っていく時の、リンクのみに当てた白いスポットの美しさは映像でもよくわかりました。

町田さんはインタビューで振付は空間の占有率を一番気にしていると仰っていましたが、今回はライトの演出によって特に広いさいたまスーパーアリーナの縦方向の空間も意識している作品と感じました。

実はこの3年ほどPIWを見に行って感じることは、群舞の構成の問題と、それ以上に照明の重要性です。
大掛かりなセットを使わないアイスショーでは照明こそが演出の要であり、また演出が今のアイスショーに求められるている要素と思います。
町田さんのプログラムが好きなのも、1つには照明の使い方が素晴らしいことです。

●「生きる歓び」と「ジークフリートの死」

プログラムで最も時間をとっているのが「終曲」を使った第三幕。第二幕はそのための筋書きの布石的な役割なことを考えると、町田さんがあらかじめ「ジークフリートの死」から作品の発想を持ったのだと推測できます。
そういえばジュニア時代の「白鳥」でもこの終曲を使ってますね。
2幕目以降急ピッチで死へ向かう終曲までの尺とバランスを取るために、最初に無人の序曲を入れる構成にしているのだと思います。

またSNSで、町田さんは(年に2プロ作るときは)テーマを裏表にしてくると書いている方がおり、なるほどと目が醒める思いです。
つまり、去年の「あなたに逢いたくて」と「アヴェ・マリア」はエロスとアガペー。
今年の「ドン・キホーテ」と「白鳥の湖」は生と死。と捉えられるのですね。

2つの作品で感じたことをまとめてみました。

作品比較

●役柄を演じるということ

タイムリーなことに、この前 放送大学「舞台芸術の魅力」について書いたばっかりなのですが、その中でも触れられていた「ストーリーのないバレエ」「ストーリーのあるバレエ」。今回の場合は後者に当たる作品です。

誓いを立てオディールに裏切られるシーン、絶望で膝をつく所、赤いライトに照らされて後ろ向きにルッツに向かう所、オデットを追いかけて光の道を滑走する最後のシーンなど、町田さんの魅力全開。それは、舞踊に加えて「役柄」を演じる魅力が加わるから。
悲劇によるカタルシスは、バランシンを代表とする「ストーリーのない舞踊」ではまず味わえないのではないでしょうか。

モーリス・ベジャールの言葉だけど、「役を演じることによって”何か”が忍びこむ」って現象こそは舞台芸術の醍醐味であり、演劇ジャンルでの一人芝居をスケートで、6分間に凝縮するというなんとも斬新な試み。

今までの町田さんのプログラムではどちらかと言えば役柄は抽象的で、固有名詞のつかない役(role)だったのに対して、今回ははっきりと「氷上舞踊劇」の中の固有名詞のつく役(character)。
バジルもcharacterですが、あちらはそのcharacterを3つの要素に分解した3つの舞踊だったのに対し、こちらは時系列に3幕のストーリーに沿ってジークフリートというcharacterが変化していく、まさに劇的表現としての舞踊。

●ストーリーの「余白」

最初は町田さん公式の筋書きにそってプログラムを鑑賞していました。
が、しばらくすると、筋書きだけでない「余白」があるのではないかと感じ始めました。

まず、バレエに出てくるオデット以外の白鳥の娘達、結婚候補の姫たちなどはばっさりカットされており、町田版では「ジークフリート」、彼の外側にある存在として「オデット」「オディール」「ロットバルト」のみ。
しかし、第一幕はとりわけジークフリートがオデットと一体になるかのような振りがあり、公式で「ロットバルトは”彼の運命”」と書かれていたりします。

深読みすると、ジークフリートの実は内側こそに「オデット(理想の愛)」「オディール(現世の欲望)」「ロットバルト(彼の運命)」が存在するとの解釈も成り立つのではないでしょうか。
町田さんの公式にあげてある「白鳥の湖」の系譜、ノイマイヤー、マッツ・エック、マシュー・ボーンはいずれもそういうアプローチをしています。

個人的に舞踊など無言劇の良さとは、意味を与えられる台詞のある演劇と違って、より解釈の自由を含んだ「余白」があることなので、いつも癖でつい深読みしちゃうんですが(笑)
考えすぎかな〜。


●未来のアイスショーへの展望

今年6月に上演された歌舞伎とアイスショーのコラボレーション「氷艶」は、私はTV放送を見ただけですが、アイスショーの一つの形として大変面白い舞台でした。
豪華な衣装とプロジェクトマッピング、アイスリンクの一面を白いスクリーンで覆って3面の舞台にして作られたものです。こちらは歌舞伎の歴史の中で精錬された演出技法を用いたもので、セリフをも用いた演劇です。

一方町田さんの氷上舞踊劇は、いつものゲストを呼ぶ(競技会後のエキシビション形式の)アイスショーの割当の中で(他の人より数分長いプログラムであるものの)照明と、小道具の一枚の羽を使っただけのもの。
こちらはアイスリンクの360度観照ということをふまえての作品で、舞踊としての無言劇です。

どちらも演出重視という未来のアイスショーの可能性を感じるアプローチですが、町田さんのはスケーター側から提示した演出可能性のありかたであり、アイスリンクを活用した総合演出の未来への布石かもしれません。
6分間の作品は感覚や即興で作れますが、2時間の舞台作品はコンセプトと構成力なしには作れません。
今回町田さんがストーリーを表現する試みに挑戦したのは、こうした未来を見据えてのことではないでしょうか。…願望がだいぶ入ってますが(笑)

期待を込めて、町田さんの今後の活躍を見守りたいと思います。
    15:42 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

放送大学「舞台芸術の魅力」と町田樹さんの連載「プログラムという宇宙」

7月PIW東京公演が終わって、「アタシの町田樹シーズン終わっちゃったよ…」と嘆き悲しんでました。
10月にJOもCaOIもあるんですけどね、行けないんですよね(;_;)
ハイTVで見ますけどね。

と・こ・ろ・が…

8月中旬ビッグニュースが来ました!!

「KISS&CRY」というフィギュアスケート雑誌(不定期発行)でなんと町田さんが連載を始めると!!!\(^O^)/
「プログラムという宇宙」

さっそくゲット♪
町田さんの初・執筆作品を読みました。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

それで、ですね。
その感想はしばし置いといて…

実は私、タイムリーなことに、8月中旬、放送大学の「舞台芸術の魅力」というシリーズを録画していて、町田さんの連載読む前にまとめて見ていたんですね。

↓番組表はこちら!
舞台芸術の魅力('17)
(再放送はもうないのかな〜?)

このシリーズの中に
「バレエの古典」
「バレエの現在」
「ダンスの現在 モダンダンスからコンテンポラリーダンスへ」
という3回にわたって舞踊史を振り返るという回があり、これがすごく面白かったのです。

この講座を「つまみ食い」してから町田さんの今回のプログラム解説の連載を読みますと、グローバルな舞踊史(舞台芸術史、音楽史、美術史)をふまえつつ、俯瞰的にフィギュアスケートの歴史と、未来の可能性にふれるものではないかと感じました。

講座と町田さんのコラムを関連付けて考えたことを書きたいと思います。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


法政大学の鈴木晶先生は「バレエの古典」の中で、

●19世紀前半大流行したロマンティックバレエは、観客層の変化や、ロマン主義の衰退によって観客に飽きられ、次第にフランスではバレエは衰退した。
●いまだに残っているロマンティックバレエ作品は「ジゼル」くらいで、あとの作品はみな失われてしまった。
という話をされていました。

「舞踊というのは踊られなくなってしまうと永遠に失われてしまう」
町田さんの言っていた永遠に失われてしまうプログラムの話と重なります。

バレエとフィギュアスケートは、(意外にも)現在見られるような形になったのは、どちらもそんなに古い歴史ではなく、共に19世紀前半です。近代フィギュアの創始者ジャクソン・ヘインズもバレエダンサーということですし、双方変化しつつ影響しあってきたのですね。
その頃と現代のバレエやフィギュアは100年余を経て全く異なる印象のものになっている。現代我々の「定点観測」ではなかなか気づきませんが、これからもまたバレエもフィギュアのプログラムも少しずつ変化し続けるわけです。

今回連載第一回でジョン・カリーを取り上げていますが、彼は「フィギュアスケート」と「バレエ」という2つの「規律」を融合させた、とあり、連載タイトルは「古典と規範」。
「2つの規律が融合した形」がフィギュアスケートの規範、「舞踊」としての古典だという捉え方ですね。

その規律の1つ「バレエの規律」は、19世紀後半ロシアで練り上げられたクラシックバレエです。

2つめの「スケートの規律」というのは、おそらくオランダで発展したという図形を描くコンパルソリーなどの技術、競技会で発展してきたイーグルやイナバウアー、ジャンプなどの技術でしょうか。

カリーの演技は今日の目で見ると「3回転しか跳んでないじゃん」ていうことになるけど(笑)、なにせ40年前。
バレエダンサーも、足を高く上げすぎるの下品ってされてましたからね〜。
当たり前だけど、バレエもスケートも時代の好みや技術の発展によってどんどん変化してるわけです。
しかし、今の4回転やスケーティングスキルの点数を稼ぐスピード重視のスケートを見慣れている目には、カリーのポジション重視の、曲想に合わせたゆっくりとしたスローなスケートは、逆に大変新鮮に感じます。

このように、「時代や流行を超えた美しい表現を見つけて糧にしよう」「そのための作品アーカイブを残そう」というのが町田さんのテーマのようです。

ジゼルしか残らなかったロマンティック・バレエの話もそうですが、星の数ほど生まれるプログラムもどんどん消えていってしまう。競技ルールの改正で、現在観ているフィギュアスケートは、10年後はだいぶ違ったプログラムが作られるようになるかもしれません。

また、スケートファンが毎年年末に嘆き悲しむことですが、全日本選手権のような、予選を勝ち抜いた日本トップ選手の演技すら「全員は」映像に残りません。

このへんを、町田さんが著作権の研究でどう道を開くのか…
大変期待がもたれるところです。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


「バレエの古典」「バレエの現在」「モダンダンス〜コンテンポラリー」の3回の講座をまとめると、

ロマンティック・バレエ→
クラシックバレエ→
バレエ・リュス公演→
戦後のアメリカとヨーロッパのモダンバレエ→
コンテンポラリーダンス→
反芸術・ポストモダン→
やっぱり芸術(21世紀)

というおおざっぱな舞踊史の流れになるのですが、興味深かったのは戦後のモダンバレエからの流れの解説。先生の定義では

◯1「ストーリーがないもの」
 純粋舞踊。形式主義。
ジョージ・バランシンやフォーサイスのように「目で見る音楽」としてのバレエあるいはダンス。

◯2「ストーリーがあるもの」
モーリス・ベジャールやノイマイヤー、キリアンのように「ストーリー」、もしくは抽象的ではあるが哲学的な「テーマ」を表現するもの。

にザックリ分けられるということでした。


さて、バレエのやり方に習ってフィギュアのプログラムをザックリ…と考えてみると。
常々思っていたのですが、フィギュアスケートのプログラムって
A  楽曲から振り付けする(表題音楽でない楽曲を使う)
B  バレエ、オペラ、ミュージカル、映画の音楽を用いて(そのストーリーや役柄を原作から借りて)振り付けする
の2種類がありますよね。


A は、町田さんの言葉だと「シンフォニックスケーティング」。よって、バレエの分け方の◯1かな。
…と書いてからハッとしたけど、ストーリーはないけれどテーマがあるのがシンフォニックスケーティングなのだから、むしろバレエの分け方の◯1の形式主義でなく◯2の方、ベジャールやノイマイヤーの方に近いかも!
案外◯1の組にはいるプログラムって少ないかもしれないなあと思いました。

B の創作とは、いわゆる「二次創作」ですよね? ※1
すでに(映画やミュージカルが創作した)存在するストーリーと主人公や物語の設定を利用しているわけですから。
フィギュアスケート以外でこういう「二次創作」ジャンル?の舞踊ってないような気がします。
もちろんバレエもミュージカルも過去の作品の「読みかえ」とかありますが…
昔はクラシック音楽がダントツで多かった気がしますが、歴史的にいつから映画音楽とかミュージカルとかが多い流れになったのでしょうか。(そして著作権問題はどうなるんだろう)

そのへんも、ぜひぜひ町田先生に解説していただきとうございます。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


「バレエの現在」では鈴木晶先生が世界の舞踊の身体的表現方法をザックリ分けて、
●東洋は「手が中心で模倣的、重心は下へ向かう」
(武道なども、腰を落として構える)
●西洋は「足が中心で内面を表現、重心は高い方へ向かう」ということをおっしゃっていて、大変興味深かったのです。

バレエやフィギュアスケートは足が中心の技法で西洋のものですよね。

また、現代バレエも、日本やヨーロッパの好みとアメリカの好みはぜんぜん違うそうです。
(ベジャールもノイマイヤーもアメリカじゃ全然人気ないんですって!ひえ〜)

フィギュアでも、ヨーロッパとアメリカのダンスの潮流はどのように影響しあっているのだろうか?
その辺のことも切り込んでくれると面白いな〜と思います。

今はそれほどクッキリ別れてるわけではありませんが、古くからのライトファンとして見た限りでは、やはりアメリカ・カナダ系のスケーターとヨーロッパ、とくにロシア系のスケーターだとプログラムの好み、バレエの取り入れ方、違いますよね。

近代フィギュアスケートの創始者ジャクソン・ヘインズも、アメリカの大会ではあまり人気がなくてヨーロッパで活動してたそう。バレエバレエしてるのはアメリカじゃ受けないのかしらねw


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


今のところ私の頭脳ではこのくらいしか出てきませんが、町田さんのコラム、本当に面白いです。

きっと、学部の卒業論文の時から勉強してきたことをベースに、新たに学んだことを加味しての連載なのでしょうね。
そんな前から自分の研究したいこと、研究の方向性が定まっていたということ。さすがです。

しかも、「身体芸術論」は町田さんの専門分野の4つのうちの1つ。

スポーツマネジメント
スポーツ文化論
文化経済学

などいろいろな研究をされてますが、私が興味深いのは文化経済学かな。美術絵画領域とも関係ありますからね。

美術館、劇場みたいな箱モノを作る行政と運営する人の問題。
助成のシステム。
等々いろいろな課題があると思います。
きっと町田さんはスケートリンク問題も絡めて研究されてるんでしょうね!

その成果を私達が見ることが出来る未来もそう遠くないと信じて♪
とりあえず連載の続きを早く読みたいです〜。


※1
10月10日追記
CaOIのパンフレットの町田さんのインタビューで、「フィギュアスケートはすべて2次創作」だと書いてあったそうです。
著作権で使う用語の2次創作だと全くそのとおりですよね〜
私がこの時書いたのは、漫画とかアニメの2次創作の意味で使いました。
すみません町田先生(笑)
    22:51 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

町田樹さんのドン・キホーテ ”Basil’s Glory”

PIW(プリンスアイスワールド)横浜公演。
GW中に2回行って来ました!\(^O^)/
町田さんきっかけで今年で通うこと3年目になりますが、プリンスチームの群舞も楽しく、他のゲストの方の演技も大いに堪能しています〜。

今年の町田さん ーーーなんだか町田くんと言いづらくなってきた今日この頃wーーーの演目は思いっきり定番バレエプログラムの「ドン・キホーテ」でした。

公式ホームページ 2017 Spring:Don Quixote Gala 2017:Basil's Glory
(ドン・キホーテ ガラ 2017:バジルの輝き)



ガラ公演2017と銘打ってあるように、ドンキの一番有名なパ・ド・ドゥを、町田さん一人で演じるということで、バジルに焦点を当て翻案したとのこと。町田ファンなら垂涎のプログラム!

感想はとにかく「かっこいい!!」の一言。
かっこよさが衣装とスケート靴を履いて踊ってるみたい(笑)
決めポーズも何気ない動きも「おおっ」てなるかっこよさ!
そして楽しい!!

見終わった後にジャンプが何本何種類入っていたかが全く記憶にないくらい、プログラムとジャンプが溶け込んでいる。あとで9本跳んでいると聞きましたが信じられないです。また、幕間の「間」も含めて9分間と聞いて、これまた信じられない。

TV放送で見直すとまた感想が変わる可能性もあるのですが、1週間後の放送までの町田ロスの心のスキマを文章に書くことによって埋めたいと思います。(爆)

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では長文いきま〜す!(笑)


まず、町田版ドンキの構成について。
このプログラムは3幕仕立ての構成になっています。

●1幕 バジルのバリエーション(約1分)、暗転
●2幕 パ・ド・ドゥのアダージョ(約4分)、暗転 
 バジルは一度幕に引っ込み赤いジレに着替えて再度登場
●3幕 コーダ(約1分半)
となっています。

…が、この基本構成の前に、「導入部の無音パート」があります。

◎リンクの出入り口の白い幕が緞帳のように赤いライトで照らされ、オケのチューニングの音が聞こえてくる。
(一気にアイスリンクがオペラハウスの雰囲気に変化します。観ている私たちはドキドキが最高潮。)
幕の奥から町田さんが登場し、無音のままトリプルルッツ!
そして、そのまま緊張したおももちでゆっくりとポジションに付き、ポーズ。

そこで初めて1幕のバジルのバリエーションの音楽が(ズンチャッチャと)始まります。

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この導入部の演出は観客に次に何が起こるのかと、一気に舞台に集中させる大変効果的な演出ですが、それと共に、このプログラムの意味ーーー「3幕仕立てのバジルの物語」の意味を重層的にしています。

青年は、バジルその人ともとれますが、一方で、舞台袖でウォーミングアップして「バジルを演じようとしている」ダンサー、本番の前にジャンプを試みるスケーターとも解釈できます。

つまり、この3幕からなるプログラムは「バジルの物語」”Basil’s Glory”である一方、「バジルを演じる演者(ダンサー、スケーター)の物語、”Basil Dancer's Glory”」としても解釈できるのではないでしょうか。

◎導入部(無音)演者のトリプルルッツ&スタンバイ
 |(以下劇中劇)
 | ●1幕 バジルのバリエーション(約1分)、暗転
 | ●2幕 パ・ド・ドゥのアダージョ(約4分)、暗転
 |  バジルは一度幕に引っ込み黒いジレから赤いジレに着替えて再度登場
 ◎3幕 コーダ(約1分半) 「この日を捕らえよ」”Carpe diem”
    ジレを着替えることによって「今という時」にキャラクターが統合する

町田さんの公式ホームページに連なっている、過去にバジルを演じたバレエダンサーやスケータ達、過去の演者たちへのオマージュ。そして、その劇中劇としての「バジル」。

私が導入部を見て真っ先に思い出したのは、1989年の熊川哲也氏のローザンヌバレエコンクールで、カメラが舞台袖のスタンバイから舞台まで熊川氏を映していた光景でした。

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バレエ版ドン・キホーテは、スペイン情緒豊かな振付になっています。スペインと言えばフラメンコ、闘牛士、ジプシーみたいなプティパ当時のロシアの趣味だと思いますが、(日本といえばフジヤマゲイシャみたいなものですかね)バジルの衣装にも振付にも闘牛士(風)が見受けられます。

町田版では1幕の「技のバジル」がもっとも闘牛士(風)ですが、2幕3幕と進んでいくに連れ、闘牛士風味が消えていくのが面白いです。ちなみに、手元にある1978年のボリショイ・バレエのプログラムを見てみると、ゴルスキー版だと三幕目は、バジルが「銀月の騎士」キトリが「ドゥルネシア姫」に仮装するとのこと。
銀月の騎士ってなんだろう?と思ってググってみると、ドン・キホーテと戦って勝つラスボス(のようなもの)らしい…
わからないんですが(笑)、劇中劇の要素はオリジナルのバレエの中の要素でもあるようです。

町田版第3幕は一度幕の中に引っ込んで、黒いジレから赤いジレに着替えて登場。
公式ホームページによるとポケットに豊穣の象徴である麦の穂を入れてとありますが、この3幕目で出てくるのは、おそらく「素の」床屋のバジル。

「バルセロナの地で自由闊達に生きるバジルその人」
「決して裕福でない青年バジルが、それでもなお今という時を楽しみ、自由闊達に踊る姿」
…という公式サイトの言葉のとおり、皆がポケットの中の幸せの麦の穂を受け取れるような笑顔でステップを披露してくれるのです。

☆町田さんは今回(特に初演の日)いつもより濃いバレエメイクをしていたようですが(といっても本物のバレエメイクよりだいぶ薄いけど)、この「バジルを演ずる演者の役作り」と捉えると、もしかしたら「メイクがはっきり観客にわかるように」?との意図があるのかな〜と思います。
もっとも公演が進むにつれ、TV録画の兼ね合いもあってか、いつもどおりのメイクに戻った気がしますが。
スケートリンクは観客との距離が測りづらくて色々難しいですね。

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このように、全体の構成は超有名バレエのガラ・コンサートの形式。
一方、気づくか気づかないかの細い伏線を織り込んだ、町田版ドン・キホーテ。

「演者」は町田さん自身でもあるわけです。

町田さんは現役時代、フリープログラムでランビエール版のドン・キホーテを演じました。2011-2012年のシーズンでした。
もちろん、あの演技も好きでしたが…
それから5年の時を経て、なんというさらに素晴らしいパフォーマンスを私たちは見られるようになったのでしょう!

2幕目のアダージョで北側に立った町田さんが大きく両腕を広げて笑顔になる場面。本当に印象的でした。
何を得たのか、何を掴んだのか。
…と、思わず見入ってしまうようなシーンでした。

バジルも町田さんも共に願いがかなったのだろうか…そう考えあのシーンを思い出すると感極まる所があります。

_________________________________________________

町田さんは今回PIWのパンフレットの中で2年ぶりにインタビューを受けていますが、「(アイスショー文化が)他の舞台芸術やエンターテイメントと競っているという意識が必要」と述べられています。

どの専門分野でもそうなんですがーーー私の専門分野の絵画でも、オペラでもバレエでもきっとそうですがーーーあるジャンルが20年30年続くと、必ずや「こうでなければ正統派でない」という考えが出てきます。

しかし、ジャンルがそのジャンルの枷を超えていかなければ、必ずや滅びます。
こと舞台芸術では、芸術性と大衆性(同時代性)が共になければ続きません。

「普通のことをやらない」町田さんに対しいまだにいろいろ言う人もあるようですが、ぜひぜひぶっ飛んだことをこれからも続けてほしいです。
毎回プログラムの期待のハードルが高くなって大変とは思いますが。

モーリス・ベジャールの言葉をひとつ。
「コントラスト、ショックーーーこれしかバレエを救ってくれるものはない。ひとは常にまどろむ傾向にあるが、時にはショックのおかげで真実をかいま見ることができる。」



5/15追記
テレビ放送されました!
やはりなんど見ても素敵なプログラム。
また観ているうちに別な感想も出てくるかもしれないですが、とりあえず今は町田さんの笑顔を堪能しています♪



8/2追記
町田くん表紙の「アイスショーの世界4」出ました!
ドン・キホーテについてインタビューでたっぷり語ってくれていますが、残念、劇中劇説は穿ち過ぎでしたね(笑)
原作の小説のバジルのイメージとバレエのバジルのミックスとは意外でした。(また小説読んでない)
そんなことも頭に入れて東京公演楽しんできましたが、またそれは別の機会に♪(長くなりすぎそう)
    00:07 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
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Author : kero

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